入試対策

中学受験の志望校対策は過去問に始まり過去問に終わる

大阪星光学院過去問

中学受験の志望校対策は、「過去問に始まり過去問に終わる」と言っても過言ではありません。

実際に合格を勝ち取るためには過去問対策が重要ですよ~というのは、あなたもあちこちで聞いた事がある事でしょう。

「そんな事は言われなくても分かっている!」
「そんなの当たり前の事でしょう!」

と思われた方も多いかもしれませんが、じゃあ実際に過去問対策をどれだけやりきっているのかをふたを開けてみれば、数年分の過去問を1回ちょろっと解いてみただけ…という受験生が実はほとんどです。

私は中学受験は「過去問に始まり過去問に終わる」と言っても過言ではないくらい過去問研究は重要だと思っているのですが、驚く事に90%以上の家庭では、過去問研究はおろか、志望校の過去問を1回解いたというだけでもう過去問対策をした事になっているのです…

現時点で偏差値が70以上あり、既に十分志望校が合格圏内にあるような優秀な子供は話は別かもしれませんが、ほとんどの子供はそうではないはずです。

ほとんどの受験生が今の偏差値よりも5~10ポイント上のランクの学校へ合格しようと思っている筈ですから、過去問を利用してなるべく早い段階で合格できるイメージを持つ事が重要なのです。

過去問を「1回解いてはい終わり」では、なかなか合格できるようにならないでしょう。

最低でも5年分を3回は解かないといけません。

1回目は全問解いてみて、2回目は間違った箇所を再度解く、そして3度目ももう一度確認を込めて間違った箇所を解いてみるのです。

過去問5年分というのはあくまでも最低ラインで、学力をあげて最後にはちゃんと合格を勝ち取っているような受験生は、当たり前のように過去問を10年分以上やって志望校に合格できるレベルまで学力を上げてくるものです。

志望校の過去問をしっかりと研究する事でその学校が何を求めているのかが明確になってきますし、これは塾ではなく受験生である子供本人と保護者も積極的に行うべき事です。

これらの過去問を使った志望校対策抜きにして志望校の合格はあり得ません。

志望校の過去問へ取り組む前に把握すべき事

そもそも過去問研究をする前に、まずは志望校の合格ラインを知る事から始めなければいけません。

ここでは私が合格した大阪府の中学校で偏差値トップ(2020年時点では偏差値70)の大阪星光学院中学を例にとり、志望校の合格ラインを把握する事の重要性を説明します。

ちなみに私自身は小学校6年時に中学受験をし、この大阪星光学院中学と智辯和歌山中学校にダブル合格しているので、実際に関西の最難関校の関門をクリアしてきているという事で、私の話は決して机上の空論ではないという事を先にお伝えしておきます。

では、大阪星光学院の中学校入学試験の概要をホームページから抜粋します。

教科 配点 時間
(分)
年度 受験者
平均点
合格者
平均点 最高点 最低点
国語 120 60 28 76.9 84.2 111 59
27 76.4 82.1 107 57
26 58.5 65.6 101 35
社会 80 40 28 55.9 59.3 76 33
27 59.1 62.1 76 29
26 64.2 67.7 80 53
 算数  120  60  28   79.7   91.6   120   53
 27   77.4   95.0   120   56
26 73.1 90.4 120 48
理科 80 40 28 51.8 56.5 77 32
27 63.0 66.8 79 42
26 46.1 51.3 73 30
 総合  400  200  28   267.9  297.8   358  276.25
 27   275.6   307.7  350   287
 26   236.7  274.8   358   244

引用:大阪星光学院中学校 平成28(2016)年度中学校入学試験の概要
http://www.osakaseiko.ac.jp/h28gaiyou-1.pdf

大阪星光学院は国語・算数・理科・社会の4科目の合計点で合否を競うわけなのですが、大阪星光学院中学を第一志望にしている家庭で把握しておかなければいけない事は、各科目の2つの平均点です。

これは合格を目指す上で非常に重要な指標なのですが、難関私立中学を目指す大半の家庭でこの2つの点数を正確に把握しておらず、ほとんどの家庭では塾での模試の判定や偏差値だけで合格できる可能性がどれくらいあるのかを判断しています。

模試で志望校のA判定が出れば喜び、偏差値がアップすれば喜ぶわけです。

しかし、受験生の志望校合格率を考える上で最も重要視すべき指標は、塾の模試が弾きだす子供の偏差値ではありませんし、合格判定結果でもありません。

上記の私の例でいえば、模試で高得点を取れば大阪星光学院に受かるわけではないからです。

本番の大阪星光学院の入学試験で合格点をクリアする事が最重要なわけですし、満点を取らなくても合格ラインに達する事ができれば晴れて合格する事ができるわけですから、模試の結果ではなく、以下で述べる事項を最重要概念として頭に入れるようにして下さい。

受験者平均点と合格者平均点の2つの指標を把握する

男子校の多くの最難関校がそうであるように、大阪星光学院中学もまた算数と国語の配点が理科と社会よりも高くなっています。

ですから、算数と国語に苦手意識があるようでは話になりませんから、まずは苦手意識を取り払い、受験日までの期間で合格者平均点に学力レベルを持ってくる事を考えなくてはいけません。

そもそもどの学校でも入試で算数と国語の配点が低いという事はまずありませんから、難関校を目指すのであれば算数と国語の苦手意識は早々に無くすように努力しましょう。

そして次に、受験者平均点と合格者平均点の差に注目します。

例えば上記の表でみてみますと、国語の受験者平均点と合格者平均点の差は7.3点、算数の受験者平均点と合格者平均点の差は11.9点、社会の受験者平均点と合格者平均点の差は3.4点、理科の受験者平均点と合格者平均点の差は4.7点でした。

こうして比較すると、やはり算数での点数の開きが最も大きいですから、算数で得点を稼げた子供が合格している可能性が高いと考えられるでしょう。

逆に言えば、社会や理科なんて合格者も不合格者もほとんど点数の開きがないわけです。きっと、設問1つに答えられたか答えられなかったかの差でしょうね。

念のため別年度の平成27年度、26年度についても見てみました。

平成27年度についてみてみますと、国語の受験者平均点と合格者平均点の差は5.7点、算数の受験者平均点と合格者平均点の差は17.6点、社会の受験者平均点と合格者平均点の差は3点、理科の受験者平均点と合格者平均点の差は3.8点でした。

平成26年度は、国語の受験者平均点と合格者平均点の差は7.1点、算数の受験者平均点と合格者平均点の差は17.3点、社会の受験者平均点と合格者平均点の差は3.5点、理科の受験者平均点と合格者平均点の差は4.8点でした。

つまり、どの年度で比較してみても、受験者平均点と合格者平均点とでは算数の得点差が大きく、算数の得点差が合否に大きく関わっていると考えられますね。

やり方は分かりましたでしょうか?

このようにして、第一志望校と第二志望校の傾向を早い段階で把握しておいて下さい。

6年生になってから、夏休みが終わったら…ではなく、もしもまだ行っていないようなら今このタイミングでやるべきなのです。

中学受験の過去問はいつから取り組むべき?

過去問は一通りの学習を終えたらいち早く取り掛かるべし

受験者平均点と合格者平均点を把握したら、次にやるべきなのは過去問です。

小学校6年生で一通りの学習範囲を終えた段階で、いち早く大阪星光学院の過去問にチャレンジしてみましょう!

塾によっては6年生の12月くらいになって最後の追い込みとして初めて過去問に取り組ませるようなところもありますが、もはやこれでは遅すぎです。

あまりにも過去問での勉強が早すぎても全くチンプンカンプンになってしまうので良くありませんが、6年生になって一通り中学受験で出題される範囲の学習を終えた段階で早めに過去問には取り組んでみるべきです。

その結果、それぞれの科目がその段階で既に「受験者平均点」くらいは取れるようであれば、そのままちゃんと学習していけば1~2月の受験日までには十分合格ラインに達する事ができるでしょうし、受験者平均点にすら到達していないのであれば、最低でも足をひっぱらない程度まで、各科目の学力を努力して伸ばさないといけません。

合格を勝ち取るための考え方としてはこうです。

本番の試験では受験者平均点ラインでは不合格になりますから、最低でも各科目とも「合格者平均点」を取れるくらいを目指して下さい。満点を狙う必要はありませんし、狙っても無意味です。

合格者平均点を狙っていれば、多少点数が取れなくても、合格者最低点のボーダーラインはクリアできる可能性が高いという事です。

一部の指導者の中には本番の出題分野に山をはって、合格最低点のギリギリを狙って、滑り込みで合格を狙わせるという教え方をする方もいるようですが、そんな合格するかしないか分からないような博打のような危ない戦略を、子供の将来がかかっている第一志望でとらせる事は余りにも危険です。

ですから、目標とすべきなのは「合格者平均点を狙う」という事なのです。

全ての科目で合格者平均点を獲得できれば確実に合格できますし、何か1つでも得意科目があればもう合格は確実でしょう。

では今度は合格者平均点の得点割合をみていくと、4科目総合得点に対する合格者平均点の割合は平成26年度で全体の68.7%、平成27年度で76.9%、平成28年度で74.5%です。

つまり、試験で7割5分をとれば十分合格できるという事が分かりますし、受験者平均点との比較から予想すると、例年7割以上の得点率が合格のボーダーラインになっていると考えられます。

中学受験業界ではよく適当な意見で「試験で6~7割取れればどこでも合格できる」と言われたりしますが、ご紹介した通り大阪星光学院中学の場合は6割の得点率では残念ながら合格する事ができないのです・・・!

もしもこの事実を知らなければ、「6割取れれば受かる」との一般論を信じ込み、入試本番では解ける問題だけをしっかり解いて6割はとったのに、実は6割では不合格になってしまうという悲しい結果を招きかねません。

つまり、こういった志望校ごとの合格ボーダーラインなどの傾向は、各志望校の傾向対策・過去問研究をきっちりとしないとまず分からい事なのです。

この事実から志望校対策を塾任せだけにしている事がいかに危険かという事が分かりますし、戦略を定めるという意味での志望校対策や過去問研究はこうやって家庭でもやった方が良いのです。

次にやるのが詳細な過去問研究

まずは10~20年分の志望校の過去問を手に入れましょう。

例で出した大阪星光学院中学の場合では、過去問で7割以上の点数を取れるかどうかが、子供の大阪星光学院中学の合不合格を判定する上での“最も参考になる指標”だという事が分かりました。

ですから中学受験の志望校対策は、まずはどれくらいの得点をとれば合格できるのかをしっかりと家庭で把握する事から始まるわけです。

こんな細かい事までは塾ではあまり言ってくれませんから、保護者がしっかりと把握してあげるのです。

本番で取るべき点数の把握が終わったら、次は志望校の過去問研究です。

一般的に各中学校の市販の過去問題集は過去5年分や10年分で販売されていますが、過去問研究は年数が多ければ多いほど良いので、市販されていない過去年度のものに関しては、塾に行って以前のものをコピーして貰いましょう。

最近できたばかりの新しい塾でない限り、塾がある近隣地域の各中学校の過去問に関しては、過去10年ぶんや20年ぶんくらいは必ず保管している筈でしょうから、受験する全ての学校の過去問をコピーして貰いましょう。

「そんな厚かましい事をお願いするのは遠慮してしまう…」と思われる保護者の方もいるかもしれませんが、塾に毎月高い月謝を払っているのですから遠慮なんてする必要はありませんし、子供の将来がかかっているのですから、遠慮なんてしている場合ではありません。

こうやって過去20年分くらいの過去問をゲットできればベストです。

塾に通ってない家庭は、ヤフオクやメルカリなどで古本を探してみて下さい。

各年度の志望校の出題傾向を把握する

次に、手に入れた数年分~数十年分の志望校の過去問を元に、年度ごとの出題状況を丁寧に分類分けします。これは各科目行います。

この分類分けを行う事によって志望校の出題傾向を調べて、どの分野、どの単元から出題される傾向にあるかを知るわけですが、やっていく過程で過去問に隠された学校からのメッセージが読み取れるようになってきます。

つまり、どういう生徒が求められているのかが分かってくるのです。

やはりこのまとめ作業に関しては子供ではなく親がしっかりと行ってあげるべきでしょう。

子供は単純に勉強だけに力を入れさせるべきで、このような事務作業や計画作りに時間を使わせない方が得策だという事と、志望校の出題傾向を俯瞰して学校が求めるメッセージをくみ取るのは、やはり大人がやった方が良いからです。

大人がやって、それを子供に伝えてあげるのです。

そしてここがポイントなのですが、分類分けはできる限り細かく行います。

例えば第一志望校の算数の分類分けを行う場合、「計算問題と文章問題と図形問題が出た」というレベルの分類分けでは何の意味もありません。

「2016年度はつるかめ算数と場合の数と比と時計算と…」といった具合にもう一階層深く踏み込んだ分類分けをしていき、それを10年~20年分表にして下さい。

20年分はさすがにしんどいかもしれませんが、最低でも5年分は確実にやりましょう。

下記に算数の場合の参考となる分類表を記載しておきます。


参照:『中学受験塾に頼らなくても合格できる』講談社 P25

こうやって過去問の分類分けをしていると、志望校の出題傾向が分かってききて「この分野は必ず出る」「この分野は2年毎に出題されている」等も分かってきますので、合格に向けての勉強がより効率的にできるようになるのです。

そうしたら、「うちの子は時計算が弱いから早急に習得しないと」などという具体的な対策の話になりますし、ただやみくもに算数の勉強をしている段階よりも、志望校合格に向けて着実に学力をアップさせていく事ができるわけです。

志望校と親和性のある学校の出題傾向にも要注意!

第一志望校、第二志望校の過去問研究をする事は当然ですが、もう1つ注意しておきたい事は、志望校と親和性のある学校、関連のある学校の出題傾向の把握です。

これはどういう事かと言いますと、例えば東京の女子校豊島岡女子学園の例を出すと非常に分かりやすいでしょう。

豊島岡女子学園が近年東大合格者数をグングン伸ばし、もはや中学受験女子御三家の2校を脅かしている事は有名な話ですが、豊島岡女子学園の大躍進の背景には、女子御三家トップの桜蔭中学に落ちた受験生を拾って育ててきたといういきさつがありました。

つまり、豊島岡女子学園は「桜蔭中学のすべり止め」というポジションをあえてうまく利用しながら、虎視眈々と最上位を狙うという長期間に渡る戦略が功を奏し、今の素晴らしい大学合格実績があるというわけなのです。

これと志望校対策がどう関係するのかと言いますと、本来豊島岡女子学園としては桜蔭学園を狙うようなレベルの優秀な女子生徒を確保したいわけです。桜蔭学園に落ちた受験生とは言っても合格者との差は僅差でしょし、学力に大きな差はないはずですから。

だからこそ、桜蔭学園に受かるために桜蔭対策をしている女子生徒を豊島岡女子学園側も少なからず意識している筈ですから、入学試験内容としてもこの2校に関連性が出てくる事が考えられるのです。

事実、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉学園の受験日が通常は2月1日ですから、2月1日にそれらの学校を受験をした女子生徒の大半が2月2日の豊島岡女子学園や白百合女子を受験するのです。

第二志望校のポジション戦略をしている学校が、女子御三家からの優秀な生徒の流入を意識していないはずがありません。つまりそれは、試験内容にも少なからず反映されるのです。

このように、多くの受験生が「志望校、滑り止め」というようにセットで据えるような、関連のある学校の過去の出題傾向にも余裕があればぜひ注目するべきでしょう。

中学受験のトップ講師がどのように解くのかを知る事は重要

「中学受験の志望校対策は過去問に始まり過去問に終わる」という言葉の意味が、決して言い過ぎではない事は理解して頂けましたでしょうか?

本当に過去問には、学校側からも様々なメッセージが隠されているのです。

ですから中学受験を志す家庭では、なるべく早い段階で志望校の過去問の徹底解剖をする事をオススメします。

ただし1つ問題があります。

それは、保護者の多くの方は中学受験未経験の方が多く、特に算数などの過去問を見たところで、「どうやって解くのか?」なんて分からないのはもちろん、答えを見たって「この問題は何算を使って解答に導かれているのか?」すら分からない方が大半でしょう。

ですから、お父さんやお母さん自身もできれば中学受験を勉強して下さい。

子供と同じレベルで習得するのはさすがに不可能ですが、上っ面だけでも把握しておく事は大切です。そうする事で問題を解けない子供の気持ちもわかるものです。

難関校の算数なんて、本当に小学生にとっては難しい問題をやっていますからね?

お母さんやお父さんは、塾でどのような授業が行われ、先生達がどのような巧妙な手法やどのような素晴らしいテクニックを駆使して難解な問題を解くかを努力して知るべきなのです。

どうしても時間が作れない場合や、お父さんお母さんでは理解が難しい場合は、お子さん専用の家庭教師を1~2週間に1回でも良いので利用してあげると良いです。

家庭教師は主に、学習スケジュールの管理や、志望校対策などに使う方法がおすすめです。

中学受験の家庭教師は上記の代々木進学会がおすすめです。

とにかく、親子二人三脚で早めの段階から過去問対策を万全にする事をオススメします。過去問対策は6年の冬から始めるのではもはや手遅れですからね!

まとめ

過去問を制する者が中学受験を制します。

学習の総仕上げという意味で受験直前期に行うのが過去問の正しい使い方ではなく、過去問を利用し、問題の出題傾向、得点分布、学校からのメッセージなどを早い段階で知る必要がありるのです。

過去問は、志望校の合格をつかみ取る上で強力な味方になるのです。

受験後に後悔しないように徹底的に過去問対策を重ね、受験本番に臨みましょう。

ABOUT ME
中学受験指導部
中学受験を目指す全ての家庭に春が来る事を祈ってます! 志望校の合格を勝ち取った後は、中学受験のその先に待っている楽しい人生を楽しみましょうね!